『風見鶏と煙突男』(その2)
5案のプロットを検証する。贅沢な悩みである。富永監督得意のアニメーションをからめると面白くなりそうな企画もあったが、今回のルールだと難しい。2案に絞り、制作部が決定したら、相談することにする。
監督自ら、制作部と交渉。アソシエイトプロデューサー:関友彦が引き受けてくれた。大作の制作担当を経験しているので、心強い。企画は、制作部判断もあったが、直感していた『風見鶏と煙突男』に決定。
問題は、煙突である。ほんものに昇るのは危険でもあり、縁起でもない。火葬場でなくても、撮影に適した安全な高さの煙突などないだろう。低予算だが、思いきってセットをつくることにする。出演者や移動も少なく、撮影時間も短い。ワンアイデアを昇華するべく、予算書も研ぎすまされていった。アソシエイトプロデューサー兼務、助監督兼務、苦情受付担当を余儀なくされる。
キャスティングは順調に進んだ。監督の希望は煙突男:柄本佑。忙しいスケジュールのさなか、なんとか参加してくれることになった。水面下で暗躍してくださったピラミッドフィルムの原田雅弘プロデューサーに多謝。風見鶏は遺影と声のみの出演。交渉は難しそうだったが、企画に賛同してくれた風見鶏:中村優子が誕生した。衣装合わせと本読み、そして遺影の撮影を兼ねた打ち合わせで、二人のお芝居の温度を調節する。楽しくも黒いフィルムになりそうである。楽しみだった。
ロケ地も決まり、美術:舩木愛子・高橋徹の協力で煙突も無事に立つ予定、すべては順調だった。撮影数日前、屋上にセットを組む予定の建物から、撮影拒否の連絡。急遽、別の屋上を探さなければならない。限られた時間だったが、制作部の努力で、なんとかロケ地は決まった。写真を見ると、むしろ、こちらの方が企画にふさわしい気がした。運がいい。こういう時はいいフィルムが生まれそうな予感がするものだ。
(その3へ続く)